【2019年3月キリマンジャロ登山スタディツアー】参加メンバーの感想① リーダー・金原守人~憧れと葛藤、理想と現実。今までの人生を試される場所、それがキリマンジャロ~
憧れと葛藤、理想と現実。今までの人生を試される場所
それがキリマンジャロ
リーダー・金原 守人
01. キリマンジャロへ行くきっかけ
七大陸最高峰(セブンサミット)の一峰であるキリマンジャロ。2016年に初登頂を果たし、何の因果か、二度目のチャンスが到来しました!これはもはや天啓、「神は言っている、リーダーとなって再度挑戦せよと…」。こうなった以上、決断を止めるものは何もなく、参加を決定しました。
前置きはさておき(笑)、ここからが本題です。
私は大学で国際地域開発学科というところに所属しており、発展途上国の開発援助について勉強をしています。19歳でヒマラヤ遠征のためにネパールへ行ったとき、途上国で起きている貧困の現実をその目で見ると、私は彼らに一体何ができ、何をしたら良いのか悩みました。彼らの境遇を他所にして、ただ現地へ行き山に登るだけでは何の改善も望めません。しかし、そういった状況を世界中のもっと多くの人達に知ってもらえたのなら、何かを変えるきっかけをつくることが出来るかも知れません。その架け橋として登山は大きく貢献できるはずだと思います。なぜなら、山という素晴らしい自然の姿とそこに暮らす人々の生活を世界中の人に一緒に伝えることが出来ると思うからです。
02. 出発前の準備やトレーニング方法
ツアー決定から出発までは5~6ヶ月程度で、山行計画、お金の工面、装備を揃える、トレーニング、仲間意識・チームワークの向上、ツアー終了後の行動予定などを考えるには十分な時間があるとは言えません。そこで重要なのが、限られた時間の中で自分がいま何をしなければならないのか、何が必要で不要なのかということを取捨選択していかなければならない、ということです。自分に割り当てられた役目を果たさなければ、チーム全体に悪影響を与えてしまうことを忘れてはいけません。
トレーニングでは、登山、有酸素運動を重点的に行いました。また、登山知識(登山技術、生活技術、医療等)を高めるための講義録を各々が作成しました。
03. これは絶対にやった方がよい!
登頂日までのダイアモックス(5日分)は全員持参した方がよい。絶対ではないですが、低酸素ルームを利用して標高4,000~6,000m帯のシミュレーションをするのも高山病予防に役立ちます。
04. 持参してよかった物
昼間に日が射すと暑いですが、朝夜はとても冷え込むので、モンベルの毛下着(ウール・厚手・上下)とミズノの発熱インナー手袋が大変良かったです。行程全般の要所要所で足場の不安定な崖や岩場、砂礫地などがあり、安定性と高いグリップ力の保持、捻挫や砂・泥の侵入防止のためにもハイカットの登山靴を履いていて良かったと思います。
頂上アタック時には風が強く寒いので、保温のための目出し帽、スキーゴーグル、テルモス(保温瓶)は重宝しました。また、砂礫地を歩くことが多いので、ゲイターの着用は必須です。
テント生活ではホッカイロ、シュラフカバー、就寝時に履くテントシューズが保温に一役買いました。また、ペーパータオルは多めに持参する(50枚程度)のを絶対に推奨!
05. 逆に持参して使わなかった物
装備面で不要と感じたものは特にありません。ですが、甘くて硬い行動食(スニッカーズチョコレート等)やパサついたもの(カロリーメイト等)は徐々に食べる気がしなくなりました。
06. 行動食 THE BEST
標高が上がるにつれ食欲が失せ、やがては固形物を見るのも嫌になった時、ウイダーゼリーが神の飲み物に思えた。それ以外では適度な塩気と噛み心地、満腹感を得られることから、柿の種(梅味)、梅練りが最適解だという結論に至りました。
その他、調味料として醤油、ポン酢、柚子胡椒、クレイジーソルト、ゆかり・ふりかけ各種、お茶漬けの素を持参しました。その中でも、梅ふりかけ、ゆかりが大変好評でした。
07. 参加メンバーについて
一言で表現するなら、「あまりに個性的&クレイジー」。それでいて馬鹿と利口を兼ね備え、「危険」と言われればアドレナリンが出るタイプという、どうしようもなく御しがたい者たちの集まりだった(笑)。
しかし、「キリマンジャロ登山」というその特異性・危険性から、最初からフツーな奴らが来るとは思っていなかったし、またそんな奴に来てほしくもなかったので、リーダーとしてある程度は覚悟していました。ところがどっこい、実際に登山が始まったらパンドラの箱を開けたかの如くの有様でした(苦笑)。この荒くれ者たちをどうまとめようかと難儀しましたが、「類は友を呼ぶ」と言ったもので、お互いミョ~に通じ合える事が多く、すぐに仲良くなれました。
一つの目標に向かって皆が積極的に協力し、助け合う。メンバー全員の圧倒的個性が遺憾なく発揮された、素晴らしくもクレイジ~なパーティーだったと思います(感無量)。
08. マサイのガイドはどうだった?
基礎ステータス(体形・筋肉・体力・耐性…等)のあらゆる面で人間離れしており、野性味に溢れ、皆が「生きる力」にみなぎっていた。温室育ちの日本人はまるでお話にならないレベルでした(苦笑)。それ故、我々には多くの助けが必要で、彼らのサポート無しでは誰一人として頂上へは立てなかったことでしょう。
フレディー以外の人たちは英語とスワヒリ語しか話せなかったのでコミュニケーションには難儀はしましたが、正直なところ、言葉の壁など何の問題でもありませんでした。喜怒哀楽や思いやりの気持ち、歌は万国共通でした。
どの方々もとても優しくしてくれて、キリマンジャロの話、タンザニアの文化や言葉、どうしようもない下ネタ話(笑)、他にも色々な事を教えてくれました。それにも関わらず、私達には不満を漏らさず、荷物を持ってほしいと頼んだ時も嫌な顔一つすることもなく、立ち往生して他のメンバーが先に行ってしまっても必ず待っていてくれました。彼らの屈強な精神とホスピタリティーさに深く感謝します。
09. 登山中で一番辛かったこと
高山病で食欲がない…からのぉ~!たっぷりご飯がチョモランマ(笑)。これがホントに笑えなくて、匂いを嗅ぐだけでもマーライオン不可避な状況で、容赦なく追加される山盛りご飯。食事のインターバルが短い時(最短で3時間)は全員が地獄を見たことでしょう…。「ゴ飯=ガソリぃ~ン、食ベナイ=Go Back」というマサイの鉄の掟を前に皆為す術なく、ヒジョぉ~に辛い体験をした。
しかし、やはり一番はリーダーとして皆をウフルピークまで連れて行けなかったことだと思っています。ステラポイントで引き返した時の光景は今でも脳裏に焼き付いています。私がリーダーとして力不足であったことが、本当に申し訳なかったと思っています。
10. 登山中で一番楽しかったこと
標高によって移り変わる植物や地質をじっくりと観察しながら登れたこと。有り金を全てはたいて購入したミラーレス一眼カメラの性能を遺憾なく発揮しての写真撮影。メンバー達とのさり気ない会話。どれも強烈な体験で順位を決められません。
11. 頂上アタック直前に感じたこと
この日の為にやるべきことはやったのだから、これから先で起きた事は全て素直に受け入れようと思った。ネガティブなことは考えず、呼吸を意識して一歩を踏み出しました。
12. キリマンジャロ登山を振り返って
リーダーとして、一個人として、多くのものが欠如していたと思います。今まで多くの長期旅行は一人で行っていましたが、その方が気楽で最悪私が死ぬだけで仲間を巻き添えにすることも無いからです。今回リーダーとして隊をまとめ、皆をキリマンジャロへ連れて行くということは、とても大きな重荷であったと感じています。
また私自身、隊を率いての登山は大学の山岳部以来だったので、「他人の命を預かる」という事の重大さへの認識が薄れていたことは否めません。ましてやキリマンジャロ、関東近郊の山へ行くのとは訳が違います(無論、山によって重大さが変わるわけではないですが)。あまりにかけ離れているメンバーとの登山経験、知識の不足、中々揃わない装備、当日までに一度も会えないメンバー、その他多くの懸念材料がありました。まさに一人だけ良くてもパーティーは機能しないという典型でした。ですが、登山中は全員が協力してくれたことで足並みが揃ったので良かったと思います。
頂上直下のステラポイント(5,756m)で私を含め、他のメンバーの血中酸素濃度が50台という危機的状況、下山の時間的余裕のなさを考え、「命か登頂か」を天秤にかけたとき、ガイドの「Go Back!」という言葉に従うしかありませんでした。ウフルピーク(5,895m)まで、あとたった139m登ればよくて、およそ1時間の距離。「ここまで来て…」と何度も思いました。登山は自己責任の世界ですが、リーダーには全員を無事に下山させる義務があるのです。「個と集団」ではスタイルが大きく異なるので、もどかしさを感じました。
13. 登山後の心境や感情の変化など
何と言っても全員が無事に下山できたことへの安堵感が大きかったです。ですが「ウフルピーク5人、ステラポイント5人」という結果を改めて考えた時、私はリーダーとしてどうだったかを自問自答しました。登山が始まる前から全員の登頂率を高められる分岐点は数多くあったと思います。結果を見れば明らかですが、半分は正しい判断をして、もう半分は間違っていたのかも知れません。今回の結果を真摯に受け止め、これまでの行いを今一度省みるべきだと思いました。
14. ズバリ、あなたにとってのキリマンジャロとは?
憧れと葛藤、理想と現実。今までの人生を試される場所。
15. 次に挑戦する人へのアドバイス
ツアーは全員がチームとして行動することになりますが、それぞれがみな違った目的を持って参加していることでしょう。例えば、アフリカ最高峰への登頂、限界への挑戦、大自然の中でキャンプをしたい、異文化情緒を体験したい、といった確固たる理由があるのではないでしょうか。たとえ自分と相手の理念が違っていたとしても、そのことを批判したりする権利は誰にもなく、相互の目標を尊重しあうことが大切だと思います。
登山とは、人間の可能性をどこまでも追求し続けることであり、また、歩くことを通して美しくとも過酷な自然と共生する術を身に着ける最良の手段でもあり、必ずしも登頂することが絶対条件ではないと思います。己の体力的、精神的な限界に挑んでこそ、自然という中で自分自身の存在意義を確かめられるのだと思います。
地球は広く、多くの謎に満ちた世界が待ち構えています。しかし、人生は無限ではありません。思い切って一歩踏み出してみると、そこには今の人生に繋がる出会いや出来事があったなんてことはよくある話です。最初の一歩を踏み出せば、そこから自ずと道は開けてくるものです。小さな勇気に無限の可能性が秘められているとは、なんとも素晴らしいことではないでしょうか。広い世界へ飛び出し、人生の新たな可能性を見つけてください!!
16. マサイ村体験はどうだった?
村では歓迎の印としてヤギ料理を振舞っていただきました。ヤギはその場で屠殺しましたが、ヤギもこの先どうなるかを察しているようで、最初は大人しかったのですが、最期の瞬間は必死にもがいていました。鋭利な刃物が喉を切り裂き、血飛沫とともに生命が果てる…。かなり衝撃的な体験でした。その後、ヤギはテキパキと綺麗に解体され、串刺しにされて焚き火にくべられる…。血と内蔵のスープは色彩・味・臭い、ともにインパクト絶大で、飲み干すのに長大な時間を要しました。また、肉には独特な臭みと硬さがあり、沢山食べる気にはなりませんでした…。
時代が一気に1万年近くも遡ったようで、なんとも原始的な感じがしました。しかし、ヤギの屠殺は残酷という訳ではなく、文明がどれほど発達しようと「生きるための根本は何一つ変わっていない」ということなのです。そして、その行為は人間がこれからも行ってゆくことなのです。
17. サファリツアーはどうだった?
アリューシャ国立公園はンゴロンゴロなど有名なサファリと比べると小規模ですが、多くの野生動物を観察できます。中心にある広大なクレーターではバッファローやキリン、イボイノシシ等、湖にはフラミンゴの群れや様々な水鳥たちを見ることができます。運がいいとキリマンジャロやアフリカで5番目に高いメル山も見られるかも!
そして何と言っても、巨大なランクルでダートを爆走するときのスリリングさといったら、これはもう日本では絶対味わえないですね!マサイの運転手、通称ビックダディーは超面白くて、カンムリヅルのことを「カァアンムゥリィヅル(腹から声出す感じ)」と連呼しまくるので大爆笑してました。また、カンムリヅルからのイボイノシシ(フツーな発音)で更に大爆笑してました。最近口癖になってます(笑)。
記事作成・写真:リーダー 金原 守人
参加メンバーたちの壮絶なドラマ!
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