【2019年3月キリマンジャロ登山スタディツアー】参加者による事前講義録!⑧ ~登山の基礎知識! 登山技術編~
登山技術について
登山するための最も基本的で、かつ一般的な技術について―
1. 行動中の基本技術
・基本歩行
行動するための最も基本的なものは歩行技術である。登山中は、さまざまに変化する地形の中で、荷物の入ったザックを背負って歩くことになる。したがって、いかに疲れにくく歩くかが大事。山ではゆっくり歩くことが第一である。また、足の置き方も平地歩きと山歩きでは異なってくる。
歩行の基本は「重心のスムーズな移動」の実現にアリ!
山の歩き方と普段の歩き方の違い↓
山での歩行 | 普段の歩行 | |
荷物 | 重い荷物を背負う | 何も背負わない |
道の状態 | 連続・不連続な急登・急降 | ほぼ平坦 |
★山での歩行の基本は、「荷物を背負って連続・不連続の急登・急降」という条件の下で、「重心のスムーズな移動」を現実することである。それによって体力の消耗を少なくすることができる。
・登り
足場が悪い登山道では、靴底全体で地面をとらえるフラットな着地が基本。踏み出した前足へ静かに重心を移す。整備された道、平地での歩行では、踵から着地し、体の重心の軸は幅の中間から垂直に延びます。
以上のことを連続的にスムーズに行うためのポイント!
a) 適切な歩幅(広すぎないよう注意)であること。
b) 踏み出した前脚の膝を十分(曲げて)入れてから踏ん張ること。
c) 荷物の度合いによって適切な前傾姿勢をとること。
また、急な登りで息が辛くなったら、立ち止まって呼吸を整える。小石などでザラザラと滑りやすい斜面の登りでは、足を逆ハの字に置くと、ふんばりがきくようになる。
・下り
登りに比べ、重力の影響で動作にスピードがつきやすい。惰性にまかせて着地すると、ひざや腰に大きな負担をかけることになる。また、そのスピードによってバランスと一定のリズムを保つのが難しくなる。即ち、登りのときの、いわゆる「静的バランス」ではなく、より「動的なバランス」感覚が要求される。
速度と歩幅をセーブし、静かな重心移動とフラットな着地をより心掛ける。
以上のことを連続的にスムーズに行うためのポイント!
a)踏み出した足裏をフラットに(気持ち)爪先から地面に置く。
b)腰の移動(重心)と踏み出す前脚が一体となって同時に動くようにする。
へっぴり腰にならないよう気を付ける。
c)膝の柔軟な屈伸で負荷を吸収しながら、リズミカルに体重をかける。
d)過度なスピードにならないようセーブする。
e)スリップに細心の注意を払う。
f)急斜面は横向きの体制をとりいれる。
※手および腕は歩行のポイントであるバランスとリズムを保つ際の補助として有効に使う。
★山歩きは、靴底全体で地面をとらえるフラットな着地が基本。踏み出した前足へ静かに重心を移す
★下りでは速度と歩幅をセーブし、静かな重心移動とフラットな着地をより心掛ける
★手および腕は、歩行のバランスとリズムを保つ補助として有効に使う
2. 呼吸と歩調
呼吸と歩調のバランスは、歩行時の体調のリズムを形成する要となる。故に、「呼吸のリズム」と「歩行のリズム(歩調)」がアンバランスだと、長時間スムーズに歩き続けることが困難になり、それがバテに直結する。理想的なのは「呼吸のリズムに歩調を合わせる」ことである。
登山開始から最初の30~40分程度は、体を慣らすため、ゆっくり歩くことを意識する。以降は無理なく呼吸を続けられるが歩行ペースの基準である。傾斜が強くなるほど息が上がるので、ペースをゆっくりに、歩幅は平地よりも小さく保ちます。慣れたからといって急にペースを上げてはいけない。
また、呼吸は個人差があるため、以下の事項を参考にしながら自分に合った適切な呼吸法を会得するよう努力する。
・パーティーで歩く
集団で行動する場合、各々がそれぞれバラバラなペースで自由に歩くわけにはいかない。当然、パーティー全体としてある一定のペースをつくって歩くわけである。とはいっても、呼吸のリズム自体に一定の対応性があるので、逆に「歩調に呼吸のリズムを合わせる」努力も必要である。
以上のことを連続的にスムーズに行うためのポイント!
a) 1呼吸で4歩(呼気で左右各1歩、吸気で左右1歩)
b) 2段呼吸法(aの4歩を2段呼気、2段吸気でやる)
c) 1呼吸で2歩(呼気で左右いずれか一歩、吸気で左右いずれか一歩)
※これらの呼吸法を一貫して行うのではなく、登り・下り・平地や体調・負荷等の関連で使い分ける。
目的は「呼吸のリズムと歩調のバランスを確立して保つ」ことだからである。
★呼吸と歩調のバランスは、歩行時の体調のリズムを形成する
★理想は「呼吸のリズムに歩調を合わせる」こと
★慣れたからといって急にペースを上げてはいけない
★パーティーの場合は、歩調に呼吸のリズムを合わせることも必要
3. 休憩
登山中は、ある程度歩いたら休憩をとってコンディションを整えることが大切である。
・休憩なんて、とにかく疲れたら休めばいい」って?それは大間違い!!
疲れは感覚に大きく左右され、それにまかせたのでは休憩のとり方は不規則となる。
これでは疲労の効果的な回復とはならず、結果的に疲れの蓄積、増大を招く!
その理由は、「歩行のリズムはそのまま体調のリズムに繋がっている」からである。従って「歩行時に形づくられた体調のリズムを保ったような形で休憩をとる」必要がある。下手な休憩のとり方は、この体調のリズムを、ひいては歩行のリズムを狂わせることになり、バテの原因となる。
・休憩のとりかた
a)一定の間隔で
b)適切な時間
最初は出発してから30分ほどで休憩を入れる。ここを「デット・ポイント」といい、あらゆるスポーツに共通するもので、いわば体を慣らすウォーミングアップに相当するものである。それ以降は荷物、コースの難易度によって変動があるが、50分~60分の歩行に対し、10分程度の休憩をはさむのが一般的なリズムである。
・休憩場所
休憩する際は、場所にかかわりなく休憩をとればいいというわけではない。危険のないことが大前提であり、できるだけリラックスできる(広さ、景色、風当り、日当り、水場等)適切な場所で、なおかつ、他の登山者の妨げにならない場所を選ぶ。
・休憩の時間にやること
登山において、休憩は単に休息の時間としてだけあるのではなく、以下の事項を手際よくこなしながら、効率的に休憩しなければならない。
a)行動食や水分補給
b)体調の点検、パッキング、靴、衣類等の再点検や調整
c)パーティーとしての指示、連絡
d)コースタイム等の記録
e)その他、様々な用足し
★休憩は一定の間隔で適切な長さを
★最初は出発してから30分ほどで休憩をとる
★それ以降は50分~60分の歩行に対し、10分程度の休憩をはさむ
★休憩は危険がなく、リラックスでき、なおかつ他の登山者の妨げにならない場所で
★休憩中は行動食と水分を摂取し、装備の点検を行う
4. 行動時間
・理想
1日の全行動時間はコースや季節等によって多少の違いがある。8時間±1時間(休憩、昼食等含む)ぐらいに抑えるよう心掛けたい。多くても10時間を超えないようにしたい。これ以上になると注意力が散漫になり、怪我や事故を起こす確率が高くなる。特に計画の段階では「行動に無理がないか」を十分にチェックしておく必要がある。
・現実
しかし、実際の行動時間は計画通りに進まないことが多く、それ以上になることが多い。故に、メンバー全体の(特に弱い人)の体力・体調や外界の条件等々、十分に配慮する。無理して長時間行動すると、次の日の行動に悪影響を与えることになり、更にはアクシデントを誘発する原因にもなる。
山では「明るくなったらすぐ行動開始(出発)し、明るいうちに到着する」よう計画を立てる。
★山の行動時間は、8時間±1時間(休憩、昼食含)が理想。多くても10時間を超えないように
★ペースは一番弱い人に合わせ、外界の条件等にも十分留意する
★無理は翌日の行動に悪影響を与えるばかりか、重大な事故を誘発する原因となる
★山では「早立ち、早着き」が大原則!!
5. 行動食
行動中の食事は「空腹を感じ、食欲がある状態の時に摂るのが一番望ましい」から、行動食は休憩時に適宜摂るよう心掛けたい。その内容としては、脂肪やタンパク質よりも、炭水化物が理想である。また、液体の形での糖の摂取が有効である。
・食べるタイミング
下界での食習慣のように「決められた昼食、決められた時間」まで空腹を無理にガマンしていては、それが長く続くとやがて食欲がなくなり、バテの原因になるので好ましいとは言えない。
従って、行動食は一番食べたいと思った時に食べておく方がよい。正常な食用を感じるうちは、まだバテていない証拠である。
・行動食と水分摂取の関係
水分を十分に補給していても、その後に食事をすると、また水分が欲しくなる。故に、「行動食と一緒に、あるいはその直後に水分を補給する」よう心掛ける。
★空腹を感じ、食欲がある状態の時に摂るのが一番望ましい
★脂肪やタンパク質よりも、炭水化物が理想。また、液体の形での糖の摂取が有効
★行動食と一緒に、あるいはその直後に水分を補給する
6. まとめ
キリマンジャロまでもう少しと考えると楽しみ!しかし、まだ登山の基本をしっかり知れていないので、早めに対策する必要があると思った。
記事作成:参加メンバー 加藤 歩 / 写真・表、修正:リーダー 金原 守人