明るい朝日を浴びて、ゆっくりと目を覚ました。
ここが時間にルーズなアフリカ時間であることを信じ続け、その日も私はのんびりと、朝食をとりに食事のテントに向かう。
気温は高くないが、日差しが強く、あたりの山々をしっかりと照らす。
昨日キリマンジャロの頂上まで行ったのが夢のように感じた。
私、ほんとにあそこに立ったんだ…と改めて驚き感動し、しっかりとその事実を噛み締めた。
朝食は、いつもと同じ、たっぷりのお粥とトースト、ベーコン、ソーセージ、卵、フルーツ。
高山病にならずに登り切るために、オラはいつでも私達に、これでもか!という量の食事を食べさせてくれたが、それはどうやら下山の時も変わらないらしい。
彼は相変わらず、びっくりする量をお皿によそってくれて、それを私達はみんなで頑張って食べた。
下山は、全くポレポレ(スワヒリ語で、ゆっくり)ではなかった。
植物はほとんど見れない荒地をひたすら下りる。
時々あたりを見渡して、こんなにも広がりのある力強い大地が、地球にはあったんだと、自分が今いる場所に愛おしさを感じた。
気付けば、いつの間にかあたりには緑が現れていた。
頂上付近では、あまりに高度が高く植物も生存出来なかったのが、このあたりまでくると彼らは生きることが出来るらしい。
健気で、それでいて凛とし、生き生きとした植物には思わず目を奪われるのと同時に、緑がどこまでも続く景色に心が安らぐ。
とうとう、ムウェカキャンプ(3068m)に到着。
待ちに待ったお昼ごはんを食べながら、ティータイムでのポップコーンを楽しみながら、夜ごはんが終わって寝るまで、私達はずっと話し続けた。
思えばここに来るまで、私達は登頂に必死で、あまりお互いのことを深く知らなかった。
何故キリマンジャロに来たのか、どうやってこのプロジェクトを知ったのか、登山中に思った事、登ってみて今どう感じているのか。
そんな話を共有して、同じ過程を辿り同じ場所に着いた筈なのに、皆それぞれに違うものを見て違うことを感じていること、それが何とも不思議で面白くて、ちょっとだけ他の人の世界を覗けた気分だった。
また、マサイ族のリーダー、フレディの話も非常に興味深かった。
日本とタンザニア。環境が違えばここまで違うのかというくらい、その生死観や結婚観が違う。
生きる、死ぬ、を淡々と受け入れそれを前提に毎日を過ごしている事、一夫多妻制の嫉妬のない(という)楽しい暮らし方、マサイ族のコミュニティを思う気持ちの強さ。
衝撃的で、受け止められても受け入れられなかったことばかりだった。
それでも。
知らなかったことを知ること。
考えてもみなかったことを考えてみること。
私の世界は、彼らのお陰でまたちょっと深く広く豊かになったと思う。
また、会いたいなあ。