2015年2月、MOTIprojectは大学生とシンガポールへ向かいました。テーマは「未来の私に投資する」。就職活動を目前にした大学3年生のリーダーが、「あの国で受けた衝撃を、もう一度、仲間と感じたい」という想いから立ち上げた5泊6日の旅です。現地の大学生と街を歩き、多民族国家の暮らしと、国の成り立ちを肌で学びました。

ツアーの概要
- 日程:2015年2月9日〜2月14日(5泊6日)
- 訪問地:シンガポール
- 参加者:大学生・専門学生8名(企画リーダーを含む)
- テーマ:「未来の私に投資する」
- 主な内容:現地大学生との交流と街歩き、国立博物館、多民族の街(チャイナタウン、リトルインディア、アラブストリート)、ホーカーズ、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、マリーナベイ・サンズ宿泊
就職活動前の半年を、価値ある時間に
この年の大学3年生から、就職活動の開始時期が半年ほど後ろにずれました。「ぽっかり空いたこの期間を、どう使えばいいのかわからない」。そんな不安を口にした大学3年生が、企画リーダーになりました。
リーダーは2年前、別の団体のスタディツアーで初めてシンガポールを訪れ、アジアの国を見る目が一気に変わる経験をしていました。「あの衝撃を、もっと多くの人に知ってほしい」。けれど、学生一人で形にする方法がわからず、あきらめかけていたときにMOTIprojectと出会います。
MOTIprojectにとっては、2013年に続く2回目のシンガポールでした。目標の15名には届かず、集客には最後まで苦労しましたが、「参加を決めてくれた一人ひとりが笑顔で帰国するために」と、リーダーと仲間で準備を重ねました。
出発前の準備
旅のテーマに合わせて、出発前のプログラムも就職活動とつながる内容にしました。
- キャリアセミナー:海外での経験をどうキャリアに活かすかを考える、4時間半の講座
- 自己分析と企業研究:自己分析シートやエントリーシートの土台づくり、さまざまな業界で働くOB・OGの話を聞く会
- ダイアログ・イン・ザ・ダーク:暗闇の中で、言葉と協力だけで行動する体験
- 参加者による事前調査:一人ひとりがテーマを決めてシンガポールを調べ、ブログで発信。下水を飲み水に変える「NEWater」、4つの民族と4つの公用語が共存する仕組み、公団住宅で起きたカレーの匂いをめぐる議論、国を支える二言語教育など
旅行代金についても、リーダー自身が大手旅行会社のパッケージツアーや大学の短期研修と内容を比べ、「何にお金を払うのか」を説明会で一つひとつ伝えていきました。
現地の大学生とつくる旅
このツアーの一番の柱は、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)の日本文化サークルとの交流でした。2010年に開校した新しい大学で、サークルにとっても日本の学生を受け入れるのは初めて。出発前からやりとりを重ね、日本語で驚くほど自然に連絡をくれる学生たちと、現地で2日間を一緒に過ごしました。
現地の大学生に交流や街の案内をお願いすると、今では大きな費用がかかることも少なくありません。この交流は、MOTIprojectの参加者がつないでくれたネットワークによって実現しました。
すでに3つ以上の言語を使いこなし、多民族の中で暮らすことを当たり前としている同世代。彼らに街を案内してもらい、一緒に食事をして、バーベキューをして、カレーづくりにも挑戦しました。現地の学生と一緒だったからこそ、ガイドブックには載っていないシンガポールに出会うことができました。彼らとは今でもSNSでつながっています。
1日目:チャイナタウンのドミトリーへ
シンガポール航空で出発。宿はチャイナタウンのドミトリーです。人生で初めてのドミトリーという参加者も多く、狭い部屋に驚きながら、旅が始まりました。
2日目:シンガポールの歴史、今、未来を一日で

朝は地元の人でにぎわうホーカーズ(屋台街)で朝ごはん。現地でお世話になった旅行会社の会議室をお借りしてオリエンテーションをしたあと、国立博物館へ向かいました。

博物館には、日本がシンガポールを占領していた時代の資料も展示されています。観光地として知るシンガポールとは別の、日本との関わりの歴史を学ぶ時間になりました。
午後はセントーサ島、世界最大級の水槽があるシー・アクアリウム、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイへ。夜はマリーナベイの光と水のショーを見て、シンガポール・フライヤーから夜景を眺めました。この日の歩数は2万5千歩。国の歴史と今と未来を、一日に詰め込んだ日でした。

3日目:現地の学生と、多民族の街を歩く

この日は、SUTDの学生たちと一緒に街へ。朝は学生おすすめのお店で点心とエッグタルト。チャイナタウンの中にあるヒンドゥー教のスリ・マリアマン寺院、人であふれる観音堂、ホーカーズでの初めてのチェンドル。アラブストリートではモスクの中に入れていただき、伝統の香水瓶のお店をのぞきました。

中華、インド、マレー、アラブ。歩いて回れる距離の中に、いくつもの文化が隣り合って暮らしている。事前調査で学んだ「多文化共生」を、自分の目で確かめた一日でした。
4日目:パンジャビでリトルインディアへ、そしてマリーナベイ・サンズ
朝はシンガポール動物園で、オランウータンと一緒の朝ごはん。その後、参加者みんなでインドの民族衣装パンジャビに着替えて、リトルインディアを歩きました。色鮮やかな寺院と花の香り。民族衣装を着て歩くことで、街の人との距離もぐっと近くなりました。

夜は、ドレスコードのあるグッバイパーティー。そしてこの日の宿は、旅の間ずっと街のどこからでも見えていたマリーナベイ・サンズです。屋上のプールから見る夜景を前に、6日間で一番の笑顔が見られました。パーティーでリーダーに贈られた「ありがとう」「シンガポールが大好きになった」という言葉は、リーダーにとって一生の宝物になりました。

5日目・6日目:帰国
朝食のあとチェックアウトし、チャンギ空港へ。SUTDの学生たちとは、動画で「また必ず会おう」と約束して別れました。
半年後の再会
この約束は、半年後に本当にかないました。2015年9月、SUTDのサークルが旅行で日本を訪れ、ツアーのメンバー4人が東京で再会。ラーメンを食べ、お台場で一日遊び、今度は日本側が案内をする番になりました。一度きりの交流で終わらず、国を越えた同世代の友達として関係が続いていく。スタディツアーの価値を、あらためて感じた出来事でした。
参加者の声
- 「10人中9人に否定されても、1人でも信じてくれる人がいれば、その人のためにがんばればいい」
- 「自分の気持ちに嘘をつかずにやり続ければ、必ずわかってくれる人がいる」
- 「シンガポールのことだけを考えた半年間だったからこそ、就職活動では自分が本当にやりたいことと向き合えた」
- 「悩んでいるのは、行きたい証拠。自分の気持ちに素直になってみてほしい」
帰国後すぐに始まった就職活動でも、「自分を偽らずに向き合えた」という声がありました。「未来の私に投資する」というテーマを、参加者が自分自身で証明した旅でした。
シンガポールでスタディツアーをつくるときのポイント
1. 「観光で行ける国」だからこそ、現地の人とのつながりが価値になる
シンガポールは安全で、交通も整っていて、個人旅行でも簡単に行ける国です。だからこそ、スタディツアーの価値は「自分たちだけでは会えない人に会えること」にあります。このツアーでは、現地の大学のサークルと出発前から連絡を取り合い、2日間を一緒に過ごす計画を立てました。受け入れ先との関係づくりが、ツアーの質を決めます。
2. 学びのテーマは「国の成り立ち」に多い
水を自給するための技術、4つの民族が共に暮らすための制度、二言語教育、そして日本との歴史。シンガポールには、国として生き残るための工夫がいたるところにあります。事前に一人ひとりテーマを決めて調べておくと、現地で見るものの意味が大きく変わります。
3. 物価は高い。泊まる場所にメリハリを
シンガポールは物価が高く、お酒は1杯2,000円ほどすることもあります。このツアーでは、ほとんどの日をチャイナタウンのドミトリーにして、最後の1泊だけマリーナベイ・サンズにしました。宿にメリハリをつけることで、費用をおさえながら、心に残る体験もつくれます。
4. 法律とマナーを、出発前に共有する
シンガポールは、ゴミのポイ捨てや公共交通機関での飲食などに厳しい罰則がある国です。日本の感覚で行動しないよう、出発前に法律とマナーを全員で確認しておきます。
5. 時期によっては旧正月と重なる
2月は旧正月の時期と重なることがあります。街の飾りつけを楽しめる一方で、お店の休業や混雑もあります。日程を決めるときは、その年の旧正月の日付を確認しておくと安心です。
引率で大切にしていたこと
- 観光で終わらせないために、事前学習を徹底する:シンガポールは、ただ行くだけでは観光になってしまう国です。訪れる場所を一つひとつ確認し、その場所の歴史を調べ、国そのものについての勉強を事前学習にしっかり組み込みました。
- 移動のルートまで確認しておく:限られた日数で多くの場所を回れるよう、移動のルートを事前に確認し、効率よく動けるようにしました。
- シンガポールでしかできない学びを、全員でつくる:中華、マレー、インド、それぞれの文化を事前に学び、この国でしかできない学びを参加者全員で考えてつくりました。
代表より
MOTIprojectとしては2回目のシンガポールでしたが、私自身は初めてのシンガポールでした。正直に言えば、私にはリーダーほどのシンガポールへの愛はありませんでした。それでも、「この国で、観光ではなく学びのある旅がしたい」という彼女の想いを、どうしても形にしてあげたかった。
集客は思うようにいかず、前途多難なことの多いプロジェクトでした。それでも、リーダーが毎日反省と挑戦を繰り返し、自分の足で立てるようになっていく姿を一番近くで見られたこと。そして、現地の学生との友情が帰国後も続いたこと。非常に価値のあるプロジェクトになりました。
MOTIproject 代表 福室まなみ(もてぃ)
※この記事は、2014〜2015年当時に参加者が書いたブログ記事をもとに、参加者のプライバシーに配慮して2026年に再構成したものです。個人名や大学名は掲載していません。
この記事を書いた人
福室まなみ(もてぃ)|MOTIproject代表
16年間で14カ国・48本のスタディツアーを企画・引率し、延べ約576名の参加者と旅をしてきました。参加者が自分たちで企画をつくり、現地の人の暮らしや文化に同じ目線で触れる旅を大切にしています。現在はスタディツアージャパン株式会社で学校・団体の研修旅行の企画と手配を担当するほか、フィリピン・セブ島の語学学校 First English Global College のゼネラルマネージャーとして学校運営に携わっています。セブでは、子どもたちの教育支援を行うNGO「MIC Educational Foundation」に立ち上げから関わっています。
スタディツアー・研修旅行のご相談
学校や団体での海外研修旅行・スタディツアーの企画、現地手配のご相談をお受けしています。旅行の手配は、スタディツアージャパン株式会社(担当:福室)が行います。
お問い合わせの際は「MOTIprojectの記事を見た」とお書きください。
スタディツアージャパン株式会社(STUDY TOUR JAPAN, Ltd)
神奈川県知事登録旅行業 第3-1104号
〒234-0051 神奈川県横浜市港南区日野8-8-11 ミハルアート3F
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