2015年3月、MOTIprojectは2回目となるタンザニアへのスタディツアーを行いました。出発前の半年間、日本では西アフリカで広がったエボラ出血熱のニュースが連日流れ、「アフリカは危ない」というイメージが一気に広がっていました。それでも、正しい情報を確かめたうえで旅に出ることを選んだ学生たちと、マサイの村でのキャンプ、狩猟採集民ハッザの人たちとの狩り、世界遺産でのサファリを体験した10日間の記録です。

ツアーの概要
- 日程:2015年3月9日〜3月18日(10日間)
- 訪問地:タンザニア(アルーシャ、マサイの村、セレンゲティ国立公園、ンゴロンゴロ、オルドバイ渓谷、エヤシ湖)
- 参加者:大学生など9名(代表を含む)
- テーマ:「学んで、跳んで、恋をして!大学生がタンザニアに恋する10日間」
- 主な内容:市内とマサイの村の2つの中学校訪問、ティンガティンガ(タンザニアの絵画)のレッスン、民族衣装カンガの仕立て、マサイの村でのキャンプ、村の保健所の見学、サファリ、ハッザの人たちとの狩り
「アフリカは危ない」の中で
2014年の夏、西アフリカでエボラ出血熱が広がり、日本では「アフリカ=危険」というイメージが一気に広がりました。友人に「アフリカに行こう」と誘うと、「今?死んでほしくないからやめて」と止められる。そんな状況の中での募集でした。
けれど、タンザニアではエボラの発症者は出ておらず、渡航にも問題がないことは、大使館や現地の方への確認で明らかでした。正しい情報を確かめたうえで、MOTIprojectは催行を決めました。出発前にはキャンセルも出て、企画リーダーも途中で交代しています。それでも最後まで残ったメンバーは、「自分たちが無事に行って帰ってくることで、アフリカは一つではないことを伝えたい」という気持ちで準備を重ねました。最初に海に飛び込む「ファーストペンギン」になりたい。リーダーはそう書いています。
出発前の準備
- タンザニア大使館でのイベント:参加者の募集を兼ねて、タンザニア大使館でイベントを開催。参事官のごあいさつ、大使館の方によるタンザニアのレクチャー、民族衣装カンガの試着、タンザニア料理とキリマンジャロコーヒーの試食を行った
- 事前調査:マサイの暮らし、120以上の民族が暮らす多民族国家としてのタンザニア、スワヒリ語、ティンガティンガ、マコンデ彫刻、人類発祥の地とされるオルドバイ渓谷などを分担して調べ、発信
- クラウドファンディング:旅の記録をフォトブックにするためのクラウドファンディングに挑戦
1日目・2日目:22時間かけて、アフリカへ

夜の成田空港を出発し、カタールのドーハで乗り継いで、約22時間。キリマンジャロ国際空港に降り立つと、強い日差しと生ぬるい風が迎えてくれました。念願のアフリカに、自然と涙が出たメンバーもいました。
この旅を支えてくれたのは、マサイ出身の現地ガイドさんと、日本人の奥様です。言葉や文化の違いを丁寧につないでくださる、心強い存在でした。夜はローカルのレストランで、とうもろこしの粉を練った主食「ウガリ」と、鶏、牛、ヤギの料理。食べきれないほどの量に、タンザニア流のおもてなしを感じました。
3日目:市内の中学校、ティンガティンガ、カンガ

アルーシャ市内の中学校を訪問しました。この日は3月11日。生徒たちと、東日本大震災についてディスカッションをしました。「大切にしているものは?」という問いに、生徒たちから返ってきたのは「幸せ」「愛」という言葉でした。お互いの国歌を歌い合い、最後は全校生徒が見守る中でバレーボール対決。
午後は、タンザニア発祥の絵画「ティンガティンガ」のレッスン。ホテルに戻ってからは、民族衣装カンガの生地を選び、一人ひとり世界に一つだけの服を仕立てました。

4日目:マサイの村でキャンプ

オフロードを走ってマサイの村へ。村長さんのお宅の敷地にテントを張らせていただきました。メルー山を眺めながら歩いて祈祷師さんを訪ね、マサイのお宅の中も見せていただきました。家具はほとんどなく、家の中で暮らすのは父母と娘だけで、男の子は別の場所で暮らすという習慣に驚きました。
夜は、目の前でさばいたヤギのバーベキュー。命をいただくことについて、あらためて考える時間になりました。マサイの戦士たちのダンスと高いジャンプに、私たちも一緒になって跳びました。寝転んで見上げた空には、満天の星と流れ星がありました。
5日目:村の保健所と、マサイの中学校

畑の中の道を30分以上歩いて、村の保健所を訪ねました。電気は最近ようやく太陽光でまかなえるようになったばかり。水も十分になく、分娩台のまわりにも医療機器はほとんどありません。それでも、ここで新しい命が生まれ、育っていく。お母さんたちの強さに、言葉を失いました。
そのあとはマサイの村の中学校へ。生徒たちが踊りやコント、民族衣装をアレンジした服のファッションショーで迎えてくれました。マサイダンスやクイズで交流し、キャンプに戻って生徒や先生と一緒に昼食をとりました。同じ国でも、市内の学校とは雰囲気がまったく違うことを、2つの学校を訪ねたからこそ実感できました。
6日目・7日目:セレンゲティとンゴロンゴロ、人類発祥の地へ

サファリ用の車に乗って、世界遺産セレンゲティ国立公園へ。ライオン、ゾウ、バッファロー、ヒョウ、サイ。「ビッグファイブ」すべてに出会うことができました。この夜のロッジは国立公園の中にあり、柵がないため、夜には部屋のすぐそばにバッファローやフクロウがやってきました。

翌日は、人類発祥の地のひとつとされるオルドバイ渓谷へ。人類がアフリカから世界に広がった道のり「グレートジャーニー」を、自分の足でさかのぼった探検家・関野吉晴さんの資料館もあり、遠いアフリカで日本人の足跡に出会いました。午後はンゴロンゴロ保全地域へ。野生動物とマサイの人々が共に暮らす、巨大なクレーターです。

8日目:ハッザの人たちと狩りへ
まだ暗いうちに出発し、燃えるような朝日を見ながらエヤシ湖へ。今も農耕や牧畜をせず、狩猟採集で暮らすハッザの人たちを訪ねました。木の枝と草でつくった家、バオバブの幹をくりぬいた雨よけ。そして狩りに同行させていただきました。視力がよく、動きの速い彼らについていくだけで精一杯。私たちが見つけることさえできない鳥を、弓矢で仕留めていました。
狩りのあとは弓矢を体験し、女性や子どもたちも一緒にダンス。近くに暮らす、鍛冶を営む民族の村も訪ね、ウガリづくりを体験しました。
9日目・10日目:アルーシャから日本へ
最終日は、アルーシャの町で自由時間。お土産売りの人たちに囲まれるのも、旅の醍醐味です。ローカルのスーパーで、タンザニアのコーヒーや紅茶を買いました。空港で、旅の間ずっと支えてくださったガイドさんに色紙を渡してお別れし、最後に、旅の間続けてきた「シークレットフレンド」の発表をして、日本へ帰りました。
帰国後:日本でタンザニアを伝える
帰国後、メンバーは「ティンガティンガ体験イベント」を企画しました。参加者がティンガティンガを描きながらタンザニアの文化に触れられる場をつくり、旅の映像も制作して公開しました。イベントのリーダーを務めた参加者は、「アフリカのすべての国をひとくくりにして危険だと思わないでほしい」と伝えています。
参加者の声
- 「アフリカは夢の世界だと思っていた。でも、ふつうの大学生でも行ける場所だった」
- 「自分の目で見て、感じて、初めてその国の状況がわかる」
- 「何が起きても『なんとかなるさ』と楽しめるようになった」
- 「たまたま集まったメンバーが、最高の仲間になった」
タンザニアでスタディツアーをつくるときのポイント
1. 「アフリカ」でひとくくりにせず、国ごとの情報を確かめる
アフリカは54の国がある大きな大陸です。ある地域で感染症や紛争が起きると、アフリカ全体が危険だと受け止められがちです。大使館や現地のパートナーから最新の情報を確かめ、参加者や保護者に根拠をもって説明できるようにしておくことが欠かせません。
2. 信頼できる現地パートナーがすべての土台になる
このツアーでは、マサイ出身の現地ガイドさんと、日本人の奥様が全行程を支えてくださいました。学校や村、保健所、狩猟採集民の人たちとの出会いは、現地で長く信頼関係を築いてきたパートナーがいたからこそ実現したものです。
3. 「見学」で終わらせず、一緒に過ごす時間をつくる
マサイの村でのキャンプ、ヤギのバーベキュー、学校での交流、ハッザの人たちとの狩り。観光客として外から眺めるのではなく、同じ場所で食べ、踊り、歩く時間をつくることで、学びが深くなります。
4. 移動の長さと日差しに備える
日本からは乗り継ぎを含めて20時間以上。現地でもサファリやエヤシ湖への移動は、でこぼこ道を長時間走ります。日差しも強く、サングラスや帽子は必須です。サファリでは、動物を見つけるのが得意な現地ガイドさんと、ズームのきくカメラが心強い味方になります。
代表より
このツアーには、とても思い入れがあります。エボラ出血熱のニュースで「アフリカ=死ぬ国」というイメージが広がり、集客は本当に大変でした。私たち自身も、怖くなってめげそうになったことがあります。それでも、タンザニアでは発症者が出ておらず、渡航に問題がないことは明らかでした。だからこそ、催行すると決めました。
国や大使館にも確認し、タンザニアは問題ないことがわかっていました。それでも、保護者の方に反対されて、参加できなかった学生もいます。一方で、本当に行きたいと思った学生は、自分でお金を貯めて、自分の意思で参加を決めました。人生を自分で切りひらけるかどうかは、こういうところで分かれるのだと、このとき強く感じました。
実際に渡航してみると、エボラのことを忘れてしまうほど、参加者全員が本当に素晴らしい体験をしてくれました。この時期に、この活動を信じてアフリカに渡航する学生がいたこと。そして、この時期に行けたこと。私自身にとっても、大きな自信になったツアーです。
MOTIproject 代表 福室まなみ(もてぃ)
※この記事は、2014〜2015年当時に参加者が書いたブログ記事をもとに、参加者のプライバシーに配慮して2026年に再構成したものです。個人名や大学名は掲載していません。
この記事を書いた人
福室まなみ(もてぃ)|MOTIproject代表
16年間で14カ国・48本のスタディツアーを企画・引率し、延べ約576名の参加者と旅をしてきました。参加者が自分たちで企画をつくり、現地の人の暮らしや文化に同じ目線で触れる旅を大切にしています。現在はスタディツアージャパン株式会社で学校・団体の研修旅行の企画と手配を担当するほか、フィリピン・セブ島の語学学校 First English Global College のゼネラルマネージャーとして学校運営に携わっています。セブでは、子どもたちの教育支援を行うNGO「MIC Educational Foundation」に立ち上げから関わっています。
スタディツアー・研修旅行のご相談
学校や団体での海外研修旅行・スタディツアーの企画、現地手配のご相談をお受けしています。旅行の手配は、スタディツアージャパン株式会社(担当:福室)が行います。
お問い合わせの際は「MOTIprojectの記事を見た」とお書きください。
スタディツアージャパン株式会社(STUDY TOUR JAPAN, Ltd)
神奈川県知事登録旅行業 第3-1104号
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